レイジ・アゲインスト・ザ・産む機械
ヘッセの『知と愛』をまだ読んでいます。
ゴルトムントがペストの嵐をなんとか通りぬけて親方のいた街に戻ってきてみると、
親方は死んでるし美人のリースべトはなんかみみっちくなってるし、
ああもう絶望とか思ってると、
たいへんな美人に出くわします。
あれやこれやの描写を連ねて、ゴルトムントが生きる希を得るというシーンがあります。
お前は女さえいれば満足なのか!と叱り飛ばしたくなるやら嬉しくなっちゃうやら。
寅さんを思い出します。
「寅さんは恋をしたことがあるんですか」と陪審員に尋ねられて、
「お?青年。俺に恋をしたことがありますか?だと?よく聴けよ。俺から恋を取ったら何が残るんだ。三度三度飯を食う、屁をたれる、クソをする。謂わば造糞機だ。」
という名台詞がふっと思い出されました。
造糞機を思い出したままiPodで曲をシャッフルして聴いてたらめちゃくちゃかっこいい曲がかかって、
題を見たら「Piss Factory」でした。パティ・スミスの。
ションベン工場。
寅さんよりも大規模。
労働者が搾取されてるのか、しかも恋もしないで、と思ってじっと歌詞を聞き取ると、
全くそんなことはありませんでした。
レイモンド・カーヴァー的世界から抜けだそうとする芸術家に憧れる少女のことのようです。
ほんとかうそか、実際にパティ・スミスはこの詩で描かれるような状況にいたそうです。
劣悪な労働環境で、
社会保険もない、残業代もない、休みもない、冷暖房もない、昼飯を食べる時間もない、しかも毎日社長から電話で3時間説教されてそのせいで仕事が遅れるという、渋谷の映像翻訳会社のようなところだったようです。
後にパティはその詩を書いていた頃のことを尋ねられ、
学歴がない女には働く場所が選べなくて皆しかたなしにそこで働くしかなかった、ということに気づけなかったみたいなことを答えてました。
学歴に直結する仕事があるのか分かりませんが、学歴ってないよりはマシですよね。
このまえ、大卒についてのアンケートに答えたんですが、大卒であることについて考えたことなんて一度もなかったから、けっこう考えこんでしまいました。
学部でも大学院でも、いわゆる実学とされる類ではなくて、
ないよりはあったほうが良いんだろうけど、無くてすぐに困ることも、
もしかしたら当分の長い間も無くて困るってことのなさそうな分野で学んでたので、
しかも学部なんで実質2年、院でも2年じゃないですか専門分野って。
ずぶではない程度の素人だと思っちゃうんですが、
優秀な成績で卒業される方々は素人なんて自分を思ったりしないでしょうね。
アンケートでは、就職のときにメッキがつくくらいでしかないと答えました。
LOVEマシーンって、セックスマシーンへのオマージュのタイトルだったんですね。
造糞機とションベン工場を経由しないとそんなことにも気づけないのか。
宅麻伸はなんのオマージュなんでしょうか。