輝き

『シャイニング』を観た。

というのも、DPZでシャイニング顔ハメ作成記事を読んだからだった。

DVDやポスターにも使われているあのニックジャコルソンの顔は映画のワンシーンで、

ジャックがドアを斧で割ってそこから顔を出しているところ。

それを顔ハメとして作ったんだそうな。

なんで今のタイミングかというと、

『Room 237』という『シャイニング』の謎解きドキュメンタリーが公開されたんですと。

原作と映画の違いから、そこにはキューブリックが仕掛けたメッセージが読み解けるんだという内容。

問題になる部屋番号が原作と映画で異なり、映画版の237という数字はアポロ計画に関係しているとか言う話だったと思う。

そんな仕掛けがあるのかとDVD借りてみました。

あんまり有名で、ステディカムで追いかけるシーンなんか特に有名で、見てないのに見た気になってた。

 

キューブリックのってそーゆーのがけっこうある。

『時計仕掛けのオレンジ』とか『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』とか『2001年宇宙の旅』とか『ロリータ』とか、見たことないのに見た気になっちゃってる。

(『バリー・リンドン』はマイナーなのでここには含まれない。)

『時計仕掛けのオレンジ』は結局みたけど何がなんやら。でも映像の綺麗さには驚いた。

 

で、『シャイニング』もやっぱり映像が綺麗だった。

事前に知っていた内容は、ジャック・ニコルソンがドアを割って顔を出すってことだけ。

だから、アル中だとか無職だったとか小説家志望とか知らなかった。

それに気がおかしくなって斧で殺そうとする対象が奥さんと息子だとも知らなかった。

英語字幕にして観たので台詞からわかることはよくわかっていないのだけど、

ストーリーは大まかに言えば、

冬季閉鎖されるオーバールックホテルの管理人として無職・アル中のジャックが雇われ、そこに親子三人で暮らして管理をするが、このホテルでは過去に、冬季に同じ仕事でやってきた家族が惨殺されるという事件があった。そしてジャックもまた、雪に閉ざされたホテルで気が狂い、家族を殺そうとする。

というもの。

 

え、シャイニングってなんなの?と当然思うわけですが、

この映画はもともとスティーブン・キングの原作があって、それをキューブリックが改変したもの。

ウィキペディアによれば、原作ではホテル自体に邪悪な力があるんですと。

そのせいで前にも管理人が家族を惨殺し、ジャックも同じ轍をふむことになるわけ。

たぶんその邪悪さに対抗できるのが、ジャックの子供が持つ「シャイニング」という能力なんでしょう、原作では。

 

ところがぎっちょんちょん、映画ではシャイニング感はあまりない。

親父が斧を持って殺しにくる直前に息子が気づいて母親に知らせるというくらい。

それ以外は「シャイニング」感はなく、

無職・アル中の親父が小説も書けなくて閉じ込められて気が狂っていく方に重きが置かれてる。

もっとも、管理人になったので冬季は無職ではないのだけど。

たぶん冬季に管理人をしてる間に小説を書き上げて作家になるという目論見があったんだろうけども、それが上手くいかなくて、さらにホテルの邪悪さに取り込まれておかしくなる、といことなのでしょう。

別にホテルが邪悪じゃなくてもいい気もしてくる。

 

原作では最後にボイラーが爆発してホテルごとジャックも死ぬそうなんだけど、

閉じ込められて、最後に爆破とか(『羊をめぐる冒険』)、ホテル自体に邪悪な力とか(いるかホテル)、

誰もいないはずなのにボールルームでパーティーとか(「レキシントンの幽霊」)、

村上春樹を思い出しちゃいました。

あと、237号室の裸の女の人が風呂からゆーっくり現れるところは、『リング』の貞子みたいだった。

あ、建物自体に邪悪な意志があるっていうのは、荒木飛呂彦の短編にあった「屋敷幽霊」に影響してるんでしょうね。

 

ホラー映画の金字塔ではありますが、一番怖いのは、ジャックの設定でした。

無職・アル中・作家志望で書けない。

家族を殺そうとするのは狂気なんだろうから理解出来ないけども、

邪悪なホテルに飲み込まれてしまうのは、リアリティと共感を持って見入ってしまった。