ああこわい。
本読みました。
地下鉄サリン事件の被害者への聞き書きが『アンダーグラウンド』で、
それの加害者版そのまま、ではなく(実行犯への聞き書きになってしまうので)、
加害者側の、オウム関係者への聞き書き。
信者と元信者に、なぜ入団したか、オウムがやったと思ってるか、もしあなたが実行犯ならやってるか等を聞いたもの。
おまけ的に河合隼雄との対談が2つついてます。
『アンダーグラウンド』出版記念対談と、
その続編出版記念の二回行われたものについて。
『アンダーグラウンド』がけっこうな量なのに対して、
こっちは人数が圧倒的に少ない。
その点でとても物足りない。
話してる量が多いわけでもないし。
たまたま地下鉄の同じ時間に乗ってたってだけの人と比べて、
やっぱりいろんな人がいるなあってのはちょっと違ってて、
またか、みたいなのがありました。
でもそれは「お告げがあったんです」的な人ばかりじゃなくて、
考えすぎちゃうみたいな人が多いように思われた。
ほんとにスピリチュアルな人は私の印象ではひとりだけ。
殆どは考えすぎちゃう地味な人。
なんだか自分がどうして宗教にハマらないのかと不思議になるくらいに、
私もあるこれあるあるわるわーと膝を打つこと多数。
村上春樹が、得意の「物語の効用」みたいな観点からオウムを理解してて興味深かった。
最初の人に「あなた、小説読めないでしょ」と看破してて、
そのへんをもっと語って欲しかった。
「悪」についての村上春樹の問題意識がよくわからなかった。
「悪」についてとか「物語の効用」については、『ねじまき鳥クロニクル』とか『1Q84』で展開されてるのかしら。
どこだったか忘れたけど「正しい」という表現に傍点があって、妙に納得した。
でも、「正義の反対は又別の正義」っていう野原ひろし(だっけ?)のような、簡単な話でもなさそうだったけど。
オウムに入ってることが不思議がられた所謂エリートはインタビューされてなくて、
なぜエリートがということに興味があったのでそこは残念だったけども、
それについて村上は満州国設立と重ねて自説を述べていた。
簡単に言うと、理想郷で自分を役立てたいからだろうということ。
理想郷なんて無いんだけどね、というオチ。
なーんか、納得行かなかった。
それに続けて、とはいえ現実社会の人が「自分はなんでもない人間だから会社にこき使われてもいいや」と思って働いてるわけじゃないぞ、と書いてるところはもう傍線。
オウムに入る人については、
正常なところからドロップアウトした人に対して、日本社会に受け皿がないから、というのは、私には恐ろしかった。
ドロップアウターしてるから、社会に受け皿が無いのかと怖い。
ああこわい。
マルチにひかっかってる公認会計士とか東大生が不思議で読み始めたんだけども、
やっぱりマルチは只のカモでまた別なんだろうなと納得せざるをえず。
それに、東大生がひっかかってるのは不思議でたとえば日大なら不思議じゃないのかとか、
そういうとたしかにじゃあ誰ならひっかかってて不思議じゃないのかというわけでもなく。
それに、金と女を追い求めて生きている知り合いがいるけども、それもまた不思議であるし、
それを言うなら自分がなんで死なないでいるのかということもはっきりしてるわけじゃないしで、
東大生だってマルチにひっかかるやつくらいいらあな。
あたりどころが悪かったんだろうな。
オウム信者/元信者のインタビューの中で、
論理的に考え抜いて、説明されるかどうかというのがその人の中で大きなウェイトを占めているというのがけっこう共通しているように思われ、
読んだ時には私もそんなところあるなと思ってたけども、
「毎年何千人も入学してるんだ、たまにゃあそういう東大生もいらあな」で納得できる私は、
あまり論理的とは言えないな。
これははまらんわけだ。
やっぱり村上春樹は文章が読みやすいやね。
河合隼雄との対談集を探したけれど見つからなかった。
どこかに無くしてしまった。
悲しい。