『シッダールタ』を読みました。

『シッダールタ』を読みました。

ヘルマン・ヘッセの小説。

 

てっきり、青年ブッダが如何にして世界のブッダになったかという悩めるサクセス・ストーリーかと思ってたんですが、

と書いて、そんなあったりめえなことをノーベル文学賞作家が書くわけ無いじゃんかと反省してます。

でも、そんなに間違ってもいなくて、

問題は、世界のブッダとは別のシッダールタってことです。

謂わば同姓同名。

 

青年シッダールタはバラモンの息子で、とても優秀。

悟るために日夜修行に励んでいると、いっそうハードな修行をしている一団にでっくわし、

こっちのが悟れそう!と一人息子ながら家を出てしまう。

その後更に悟れそうなブッダに出会うが、

思うところあって弟子入りせず、

遊女に弟子入りし、渡し守に弟子入りしするなど、波乱万丈な修行ライフを送る。

その生涯の果てに老年を迎えたシッダールタが見た光とは…

この冬、全ての悩める人に送るハートフルロマンチックラブコメディ。

輪廻、抜けだしちゃおっ☆

 

カウンセラーの方曰く、悩んでる人にヘッセは良いそうです。

デミアン』を勧められたんで、読んじゃおうかしら。

 

いくら立派な教えを聞いても体験しないことにはダメよという感じの終わり方でした。

ヘッセが仏教を理解しているかどうかということは全く気にならないくらいに、

書いてあることが立派でした。

思い返せば説教臭いことを言われてる気分になりそうなんですが、

それがいやまた何ともなくて、

たしかになあ、そうだよなあ、なるほどなあとふむふむ読んでる間に終わりました。

 

面白かったんですが、

ちょっと高尚すぎてせっかくの有難いお言葉があんまり頭に残ってません。

ストーリーを愉しむとか、他人に奨める楽しさとかもある程度は勿論あるけれど、

うずくまって一人で読むような小説です。

糠と塩と生野菜を食べて台所の隅でじっとしてるような時は『シッダールタ』を読みましょう。

雨の日とか家から出ない日に、暖房つけるほどじゃない寒さの日に、

自分の部屋が宇宙船みたいだと感じられた日にどうぞ。

デートに誘ったら「予定確認するわ」以降の返事がないときにどうぞ。

おめえ恋人いねえみてえなフリしてたくせして来週の土日はディズニーランド♪とか泊まりかようんこたれブチ殺すぞもしくは事故か病気で死ねいややっぱりこの手で殺すと呪った日にどうぞ。

こりゃ出家しかないなと覚めた日にどうぞ。

全部とは言わないまでも大半が嫌になって自殺した近所の人を思い出した日にどうぞ。

明日飲みに行くとか安請け合いしてどうせおめえは約束破って来ねえんだからこっちも本気にすることないよなって日にどうぞ。

国立劇場で豆大福を買ったら殆ど豆が入ってなくてしかも特段美味いわけでもないハズレを引いた日にどうぞ。(本当に国立劇場2階の豆大福は買うだけ損)

 

本当は『シッダールタ』を読みたかったんじゃなくて、『ガラス玉演戯』を読みたいんですが、

次は『知と愛』です。知も愛もどちらも持ち合わせがないので、読んで参考にします。

原題に忠実に訳すと、『ナルチスとゴルトムント』。

たぶん人名。

たしか修道院の話です。

 

ああ惚れないなあと思ってた人に惚れた直接的なキッカケが、

距離と匂いだったと思うのだけど、

その感覚って夢に出てこられると惚れちゃうのに似て、

自分にはどうしようもない感じが、

三度炊く飯さえ固し柔らかし思うままにはならぬ世の中だなあといとおかし。

そんな日はヘッセの小説を読んで寝よう。