読み方なんて

ブック・レビューにTim Parksが本の読み方について書いてました。

 

前回の記事では「実際にペンを手に持って読むべし」という教えを説いてましたが、

さすが21世紀、反応が速いですが、読者から「実際にどういうとこにマークしてるんですか?」という質問があり、

今回はTimがどう読んでいるかについて書いています。

読むときに一番気にしているのは、

著者にとって、少なくともこの本にとって、一番大事なことは何か、という疑問だそうです。

で、それに見当をつけながら、関係のありそうな語に下線を引いていく、というのが御大の読み方みたいです。

あと、そこで想定された重大な価値観を軸にして、登場人物はどのように配置されているかも読む際のポイントみたいですね。

断わっているのは、読んでるうちに重要と思われたことが二転三転してくることです。

村上春樹ヘミングウェイが例に挙げられてて最後に、みんなが知ってる本を取り上げてみると、と『ユリシーズ』の1章と2章を解説しててたまげました。

 

欧米じゃそんなにみんな『ユリシーズ』って読まれてるんですか。

そらマリリン・モンローも読んだ本ですけども、そんな一般的な本だったのか。

 

読み方とか考えたことなかったんですが、参考にはしないですね。

そもそも何のために読むのかってことがはっきりしてれば、どう読むかも決まりそうなもんでしょ。

小説読むって楽しみで読むんだから、好きに読めばいいじゃないの。

マークだってしたいとこにすればいいし、すべきところがわからないならそれでいいじゃないか。

というそもそも論とは遠く隔たったところからきっと質問は発せられてるんでしょう。

よりよく小説を論じるために読むってことかしら。

わかんねえなあ。

 

『大学教授のように小説を読む方法』という本をちょっとだけ立ち読みして、

けっこう面白そうでした。

読みたいけど値段か思いの外高い。

でも、食事についての示唆は興味深かったので、得るところは多そう。

読む前から嫌になってるのは、天気が曇りや雨の場合は主人公の気持ちが憂鬱だということ、みたいに、意味を限定してることがあったら、という点です。

中学の国語の授業でそういう先生がいたんですよ。

魯迅の、実家に帰ったらいじめっ子がやたらヘコヘコしてきてさもしくなってて、嫌な気持ちになりましたって話の短編を「大学の授業みたいに解説します」って言って期待したら、

冒頭の曇り空を、「これから物語で起こることが好ましくないことであることを暗示している」ってベタに解釈してて、

(つまんねええええええええ)と叫びだしそうになるのを堪えて寝てたことがありました。

魯迅が曇り空を好きな可能性は無視かと。

あの先生は『おもひでぽろぽろ』の名シーンで答えた二人は憂鬱症だって言い張るのかしら。

そんな回りくどいことしてねえで、そんなベタに解釈される前提の曇り空なら、

「これから起こる話は暗い話で、うんざりします」って書くだけにしとけバカとか思ってました。

そんな決まりきった解釈コードがあるならそれをヒネりたくならんのかね作家は。

それとも、そんな捻くれた結果の「ズバッ!」だったのかしら。

 

読書術系の本て読んだことないです。

そういう読まず嫌いは良くないんだと頭ではわかっちゃいるんですが、体は嫌だって言ってるぜ奥さーん!

そして読んでも実践できなそう。

一念発起して読んでみようかしら。

 

読書術でググった結果を読んだだけでなんだかクラクラしてしまいました。

なんなんですかねこの、読書術という言葉が使われる文脈は。

ためしに食事術でぐぐったらやっぱりそんな言葉が使われてました。

散歩術なんて言葉もあるんですね。

文章術とか恋愛術、交際術に雑談術、ブログ術なんて言葉もあるのね。

ついてくる言葉は、戦略的、モテる、売れる、稼ぐ。

上昇志向しだるま。

「〇〇力」みたいなことなんですね。

戦略と戦術の違いを教えてやるー!みたいな。

さすがに老人術なんて言葉は使われてねえだろとググったらありましたよ。

プロレス側の人間が書いてました。

術ってくらいだからスキルなわけですよね。

方法を教えるんだから、攻略したいことがあるわけで、勝ち負けの世界のことだから、引き分けに持っていかずに、上昇するための技であると明言するわけですよね。

楽しい恋愛術よりは、確実にモテる恋愛術のほうが役に立ちそう。

役に立つとか立てようってつもりで読書をしてないから、読書術を敬遠してるんでした。

ソウダッタソウダッタ。

 

ヘッセの『郷愁』を読んでます。

田舎の百姓の息子であるペーター・オカメチンコが主人公で、回想してます。

この回想ぶりが冷静で、その割に内容は時折突飛で、そのギャップがおかしいです。

青春時代を回想してるので恋愛がやはり出てきますが、

恋してる人ってのは、どうも同じなんですね。

友人が恋多き男で、彼の話を聞いてるときに出てきたのと同じのがこの小説にありました。

もしかしたら友人の話でなくて寅さんで見たことだったかもしれませんし、

別な映画や小説だったかもしれませんが、かなり共通してます。

またお前か!と余白に書いてしまいます。

小説は『知と愛』のように進まず、比喩も冴えず、描写もぼやけた印象です。

何が面白いんだか。

主人公のペーターをどこかで読んだなと思ったら『異邦人』のムルソーに似てる気がします。

映画の『異邦人』はマルチェロが老けすぎてて違和感がありました。

あんなどっしりと存在感があるとちょっと、勢いで殺したりはしないだろ。

でもマルチェロスク水姿が見られるので貴重。