映画の感想

許されざる者』『ワイルドバンチ』『天安門、恋人たち』を観ました。

 

許されざる者』は最後の西部劇と言われる映画で、

なんでかってえと、勧善懲悪とか、あるいは物語の座りがいいように分かりやすく悪役とか善人とかを当て嵌めてない作りになってるから、らしいですよ。

主人公のクリント・イーストウッドが最後に敵を殺しまくるんだけど、それが丸腰のやつを撃ち殺すとかしたり、まあ騎士道精神というかガンマンシップに則ってないというか。でも舞台も時代も設定もまるっきり西部で、ああ、たしかにこの時代の本物だったらこんなでもありうるわな、というリアリティある生々しい西部劇で、倫理的にはたぶんすっきりできない話。

なんですが、めちゃくちゃすっきりしました。耐えるイーストウッドが爆発して悪魔みたいになって殺しまくるのは爽快でした。

印象的だったのは、モーガンが人を殺せなくなってるところ。『蝉しぐれ』だったっけ、屋敷内で切り合おうとしてる侍二人の手がブルブル震えるっていうシーンのある映画。江戸時代の侍って剣術の稽古はしてても実際に人を殺す機会なんてないから、びびっちゃうっていうシーン、ああ確かに人殺すのも殺されるのも怖いよなとリアリティあって好きなんですが、あのシーンって『許されざる者』からなんでしょうか。

映画評で見た、なんで保安官が屋根の修理をしてるかって話が、『グラン・トリノ』の庭掃除のアメリカンな話と繋がってるように思えました。

ぐっときた台詞「何故俺がこんな目に。新築してたのに」

本人には重大事である新築なんですが、それが現実的であればあるほどシーンの深刻さから遠くて滑稽ですらあって好きです。でも気持ちにはリアルなんですよね。殆ど詩だと思いました。幽遊白書の「明日戸川純がテレビに出る」とか言うシーンも同様に好きです。

 

ワイルドバンチ』は、言わずと知れたペキンパー監督作品。

初代「最後の西部劇」だそうです。「最後の文士」なんて言葉もありますね。作家で和服着てりゃいいんでしょ。

最後の銃撃戦が有名ですが、こちらは全く爽快じゃありませんでした。

ぐっときた台詞「奴にはこれが仕事なんだ」

追いかけてきやがってと毒づく強盗仲間に対してボスが言う台詞。悪人なのに倫理的で、多様性

 

天安門、恋人たち』は期待しすぎて失敗でした。

題に天安門ってあるくらいだからもっと天安門に集中した話かと思ってたのに、殆ど添え物。そりゃあ大事なシーンではあるでしょうけれど。

なんで天安門に期待したかというと、数年前の道路占拠デモがあったじゃないですか。あの画像を観てたら学生が勉強してる姿がたくさんあって、こういうところにいる学生がここで出会って恋をすることもあるんじゃなかろうかと興奮してしまって、そんな映画が見たくなってしまって、ググったら天安門が題になってる映画があるじゃない。観たらば、激動の時代を生き抜く恋人たちの話でした。しかもけっこう生々しい。堕胎とか不倫とか。違うの!もっと爽快な恋愛物が見たかったの!観ない奴は馬鹿!

どのくらい爽快かというと『au revoire taipei』くらいのやつ。出会って、行動を共にして、ドキドキはするんだけどそこまで進展はしなくていいんだ。『天安門』はセックスシーン多すぎ。若くて美人で無軌道ならそりゃセックスもしまくるだろうけどさ。

期待するくらいならちゃんとあらすじ読めよって思われるかもしれません。しかしワタクシの好みは全くあらすじを読まないで、最初から最後までどうなるか知らないで観てたいというものなのです。であるからして、ハズレを引く可能性は常人の比ではないことは火を見るより明らか。明らかに非を認めて観賞態度を改めるべきですが、物語の多くを楽しめるので辞めません。

天安門』は天安門事件を扱ったという点と過激な性描写で当局から厳重な処分をされてるので、天安門を主軸の背景にした映画が撮られるのはもっともっと先なんですね。

ぐっときた台詞「彼とは同じ境遇のような気がした。孤独で何も目標がない」

これはもう、私の境遇を言い当てられててハッとしたからでした。

次点では「私には未来がある。目の前は真っ暗でもまだ先がある」

OMSBのthink goodを思い出しました。